ヘッド・ペグ
『原版』のGrecoロゴは、当時のグレコのフェンダータイプギターに採用されていたデザインで、文字の内側が金色になっている。『復版』のGrecoロゴは、1970年代の特別仕様モデルに採用されていた「The Greco」ロゴに似たデザインで、パールが使われている。
ペグのストリングポストは、『原版』がポストの中心に弦を差し込むタイプ、『復版』は弦を横から差し込むタイプとなっている。ワッシャーは『原版』の方が小さくスタイリッシュに見える。
ペグのギアカバー部分にはそれぞれグレコのGマークと「GRECO GUITAR」の文字が入っている。ペグボタンの形状は楕円の丸タイプで似ているが、『復版』の方が厚みがある。
『原版』はペグにメーカー名が入っておらず製造元は不明。ギアボックスはひし形で『復版』より高さがある。あまり見かけない形状となっており、専用設計かもしれないが、他のストラトタイプのギターにも使用されていた。
『復版』は韓国のJin Ho製。
ヘッドの角度は双方共に14度となっている。だが所有する2本を比較すると『原版』の方が少し角度が大きい。そのため『復版』のハードケースに『原版』を収めようとしても、ヘッドが底に着いてしまってケースを閉めることが出来なかった。ただ製造時期や個体差によるものかもしれないので参考程度に。
ネック・ナット
『原版』のナット幅は製造時期によって43mm、38mm、40.5mmと3種類あり、写真は38mmの極細期の物。ローポジションの弾き辛さはあるが、キュッと締まったウエストのようでプロポーションがとても美しい。ナット素材はおそらく牛骨。
『復版』のナット幅は40mmで、こちらも細めの部類。個人的には手が大きい方ではないのでとても弾きやすいが、手の大きい人にはあまりお勧めできない。ナット素材は「グラフテック NUBONE」。写真の個体はナットの色がくすんでいるが個体差によるもので、別の個体では白いのも有る。
ネックは双方共にマホガニーネック、ローズ指板、セットネック、ミディアム・スケール、ポジションマークはドットインレイとなっている。ネック・バインディングは無い(リイシュー版には有)。
ネックの厚みは『原版』の方は38mm極細バージョンのためか薄い。初期の43mm物なら厚いとの情報有り。『復版』はどちらかといえば厚い方だが、ナット幅の細さの影響なのか弾き辛さは感じない。
『原版』のローズ指板は導管が目立ち、素材的にはいまいち。『復版』のローズ指板は黒く見えるが染色されたもので、指板サイドは明るいローズなのが確認できる。個人的には染色に否定的ではなく、別の個体ではサイドも黒いのだが、この個体のバインディングっぽい所が好み!ただ、指板清掃をしたら色落ちしてきて少し明るくなってきた…。
トラスロッドの調整は、『原版』の場合ピックガードを外さないと出来なかったが、『復版』ではホイールナットを採用し容易に調整が可能となっている。オリジナルの完全復刻に拘らず、ユーザービリティーを優先してくれたのは嬉しい限り。
細かい箇所だが、指板サイドのポジションマークが『復版』は少し大きくなっている。
ボディ
ボディ前面には違いはほぼ見られない。ボディ材はマホガニーで、塗装の上から光加減で目視したところ、『原版』2ピースまたは3ピース、『復版』は3ピース。ピックガードとブリッジの間に隙間が有ったり無かったりするが、個体差が有るようだ。
ピックガードに金色で書かれたロゴは『原版』が「Boogie」、『復版』が「The Greco Bg. Emerged 1980」となっている。『原版』の方は文字が消えかかっている個体を多く見かけるので、注意して取り扱った方が良い。
ボディ背面の形状も細かな部分を除いて大きな違いは無い。コントロールパネルプレートのネジ位置が1箇所変更されている。
ジャックプレート辺りのボディエッジ処理が異なっている。『原版』はそこだけ盛り上がるように角張っており、『復版』は周りと一定。
『原版』はストリングブッシュの埋め込み後に塗装されており、弦が引っ掛かったり擦れたりで塗装が剥げやすい。『復版』はストリングブッシュが露出しており、塗装が剥げる心配は少なく加工も綺麗。
ボディパーツ
『原版』のピックアップは「Baby Gang (ベイビー・ギャング)」。太めのバータイプのポールピースで、ピックアップは透明のプラスチックケースに覆われている。その為一般的なシングルコイルサイズより大きくなっており、ビザール感が出ていて大変好み。
『復版』のピックアップは「Blade Gang (ブレード・ギャング)」。細めのバータイプのポールピースで、ケースには覆われていない。ポールピースは平らではなく、指板のRに合わせて弧を描いている。
音色に関しては共にミドルが強めのくぐもった音が特徴で、『復版』は『原版』の音の再現度が高い。些細な違いとなると、『原版』は分離感が有りジャリっとしたシングルコイル傾向、『復版』は纏まりのあるハムバッキング傾向でパワーが多少強めに感じる(ピックアップ以外にネックの幅や厚みが違うので、あくまでも所有個体同士の比較)。
また、ピックアップを固定するネジの種類が異なっている。
ピックアップ・バランサーは『原版』より『復版』の方が細かな音色調整が可能で利便性が高い。
ピックアップの直流抵抗値は以下の通り。
|
『原版』 BG800 |
『復版』 BG-1400 |
フロント |
6.79 |
6.50 |
リア + センター |
11.89 |
12.49 |
リア |
5.97 |
6.50 |
『原版』のブリッジはブラス製(真鍮)で、メーカーは不明。
『復版』のブリッジの素材は不明。メーカーは、グレコのギターとなるとGOTOH製が濃厚?
ノブは黒のベルノブ、トグルスイッチのレバーも黒で双方同じ。トグルスイッチを固定するリングナットに違いが有るくらい。
『原版』のジャック関連は、ネジが皿小ネジ、ナットがシルバー、そしてプレート角が『復版』より少しだけ丸い。
対して『復版』のジャック関連は、ネジがなべ小ネジ、ナットが黒、プレート角は『原版』より少し鋭角。
『原版』のコントロール・キャビティ内はアルミでアース処理が行われている。しかし底辺部分のみでサイドはアルミが貼られていないので、ノイズ対策的には不十分。ポットは書かれている数字を頼りにネット検索すると、真偽の程は分からないが500kΩとの情報があった。500kΩは一般的にハムバッカー・ピックアップで使われるが、本当なら『復版』との音の違いにかなり影響していそうだ。またボリュームはGカーブ、トーンはDカーブと、あまり聞いたことのないタイプとの記述が見られた。バランサーのポットは文字が読み取れないので不明。トーン・コンデンサーには「(Y) 473M 1H」と書かれている。トグルスイッチはボックスタイプ。
『復版』のコントロール・キャビティ内は全面導電塗料でシールディングされており、ノイズ対策も万全。ポットは250kΩで一般的にシングルコイルに使われるタイプ。ボリュームとバランサーがBカーブ、トーンはAカーブ。トーン・コンデンサーには「473J」と書かれている。トグルスイッチは一般的な仕様の物になっている。
コントロール・プレートの裏側はどちらもアルミが貼られているが、『復版』の方が際までしっかり貼られている。