Boogie「BG800」の詳細
ここでは、Greco Boogie & Bg.シリーズのオリジナル・モデルである「BG800 (Boogie)」の詳細を見ながら、BoogieやBg.というギターの特徴を挙げていく。
ここでは、Greco Boogie & Bg.シリーズのオリジナル・モデルである「BG800 (Boogie)」の詳細を見ながら、BoogieやBg.というギターの特徴を挙げていく。
見た目はボディ形状、ヘッド形状、シングルコイル・ピックアップ3基、大柄なピックガード、ブリッジ形状など、フェンダー的要素が目立つ。
一方木材はマホガニーボディ、マホガニーネック、ローズウッド指板と、ギブソンのギターを思わせる仕様となっている。ミディアムスケールでセットネックなのもギブソン的要素。
塗装はポリエステルで、ラッカー塗装のような経年変化は起こらないが、綺麗な状態は保ちやすい。写真の個体は元は白色だが、経年でクリーム色に色焼けしている。
特徴的なリバースヘッドは「ルックスを考えただけではなく、各弦が理想的なテンションを保つために設計されている」のだとか。
5色展開の内、マホガニー・カラーはヘッド表が黒色、その他のカラーと最初期のマホガニー・カラーはボディと同色のマッチングヘッドである。
ギブソン系ギターのように14度のヘッド角が付いている。高音弦はテンションが強いが低音弦は逆に弱くなるので、少しでもテンションを稼ぐため低音弦は一般的な弦の巻数より多めに巻くのが良いかもしれない(写真で言うと5弦のペグポストの巻数は多めだが、6弦はもう半巻きから一巻きほど多くした方が良かったか)。
ペグはグレコマークの入ったロトマチック・タイプ。
シリアルナンバーはヘッド裏に書かれており、数字始まりの物と、アルファベット始まりの物とが存在する。
数字始まりの物は「9_XXXX」の場合は79年製(未確認)、「0_XXXX」の場合は80年製。下4桁は個体番号なので生産月までは分からない。
アルファベット始まりの物は、最初のアルファベットが生産月を表し(A=1月,B=2月,…)、その次の2桁の数字が生産年を表す。
ナット幅は発売時期によって3種類あり、大まかには43mm(~1981年9月)、38mm(1981年9月~1981年10月)、40.5mm(1981年11月~)となっている。38mmのシリアルナンバーは「I81」「J81」で、それ以前が43mm、それ以降が40.5mmとなる。ただ、「I81」「J81」の全てが38mmという訳ではなく、38mm以外の幅の個体もあるようだ。写真の個体は38mm期のもので、実測では38.5mm。Bg.シリーズ全体ではナローネックな40mmが多く採用されているが、日本人の手の大きさを意識した結果なのかもしれない。
ナット材は牛骨と思われる。
ネック厚は時期によって厚い薄いが有るようだ。このナット幅38mm期の個体は薄め。ネック素材はマホガニー、指板はローズウッド、指板アールは305R、全長は628mmのミディアムスケールで、ギブソンの仕様が色濃く反映されている。フレットはワイド・オーバル、インレイはドットが採用されている。ネック・バインディングはオリジナルモデルには無いが、リイシューモデルなどには有る。
ネック・ジョイント方式はセットネック。高フレット側の演奏性向上を狙ってボディ側は斜めにヒールカット処理が施されている。
ボディサイズは若干大きめで、ジャズマスターやジャズベースのようなオフセット・シェイプ(くびれの位置が上下で異なる)となっている。ボディバランスは良好で、一部ボディの軽い個体を除けばヘッド落ちの心配は無い。
両ホーンの先端部分まで覆われたWウィングタイプの大柄なピックガードが特徴的である。このギターの見た目を印象付ける一番のポイントであろう。ピックガードには「Boogie」の文字が金色で刻印されている。触ると若干彫り込みされているのが分かるが、擦れて金色が薄くなっている個体も多いので取り扱いには気を付けたいところ。
ボディ・トップはフラットでコンター加工は無い。
弦は裏通しとなっており、ボディ裏側にストリングブッシュの穴が開いている。コントロール・キャビティはギブソン系に見られる裏から開けるタイプ。
ボディ・バックはウエストが当たる部分と、下部ホーン部分にコンター加工が施されている。下部ホーンにコンターが有る理由は不明だが、アクセントになっていて格好良い。
ボディ側面のエッヂのRは、トップ側よりバック側の方が丸みがある。ストラトキャスターと比較すると、トップ側が少し鋭角。
ボディ厚は約41mmで、ストラトの45mmと比較すると若干薄め。
ピックアップはBoogieのために新開発されたシングルコイルの「Baby Gang」。バータイプのポールピースが特徴的で、透明のプラスチックケースに覆われている。
ブギーの機能面での一番の特徴と言えば「ピックアップ・バランサー」であろう。フロント・ピックアップは通常通りのシングルコイルなのだが、センターとリアのピックアップは連動しており、中央のノブを回すことでシングルコイルからハムバッキングへとサウンドを滑らかに変化させることが出来、幅広い音作りが可能となっている。例えばノブの目盛りを3にした場合、センター・ピックアップが30%加味されて、シングルにハムの成分が少しブレンドされた音が作れる。ただ実際はそれほど細かく音色が変化する訳ではなく、過度な期待は禁物。
センター・ピックアップは特殊な使われ方をしているため単体で鳴らすことは出来ず、一見S-S-Sの3シングル配列に見えるが、実際はS-SかS-H配列という事になる。センター・ピックアップがブリッジ寄りになっているのは、サウンド面に加え、ピッキングの位置を考えての事なのだそう。
サウンドは一言で言うとミドル寄りになるのだろうが、厳密に言うとトーンを絞った時のようなこもった音で、ストラトのようなジャギジャギ感は無い。ピックアップの特性+木材がマホガニーなのも影響しているのだろう。ただパワーは有り、同じマホガニー単体のSGと比べても低音は出るので、イコライザーでミドルを下げればある程度扱いやすい音になる。
コントロールはネック側から1ボリューム、1バランサー、1トーンという並び。ノブは黒のベルノブ。ピックアップ・セレクターはギブソン系で見られる3ウェイ・トグルスイッチ。
ブリッジはストラトの様な裏通しの6連サドルだが、トレモロ機構の無いハードテイル仕様。サドル素材はブラス(真鍮)でニッケルメッキが施されている。ロングサスティーンを狙った仕様や素材となっているようだ。ブラス製の影響か、サドルのメッキが剥がれてしまいやすい。
ジャックはボディ側面に有る。
ストラップピンは大きめ。フェルトは元から付いてあったか、後から自分で付けたか失念。
ピックガード下のザグリは所謂弁当箱ではなく、ピックアップの配置に合わせて無駄なく掘られている。ザグリ部分には黒色の文字が書かれているが判別不明(カタカナの「マ」にも見えるが、マホガニーカラーじゃなくホワイトだし…)。
トラスロッド調整のナットはヘッド側では無くボディ側に有る。調整は六角レンチで行うが、弦やピックガードを外さないと調整出来ないのでとても不便に感じる。
ボディ裏側のコントロール・キャビティはアース処理のアルミが貼られている。トグルスイッチはボックスタイプが採用されている。
ボリューム・ポットには「504072 16 K」、バランサー・ポットには「5040?? 16 K」(はんだが乗っており一部判別不可能)、トーン・ポットには「504042 14 K」と刻印されている。ポットに書かれている数字を頼りにネット検索すると、真偽の程は分からないが500kΩとの情報があった。またボリュームはGカーブ、トーンはDカーブと、あまり聞いたことのないタイプとの記述が見られた。
トーン・コンデンサーには「(Y) 473M 1H」と書かれている。
Boogieのロゴが印刷された専用のハードケース。経年で文字がかすれてきている。専用ケースなのでヘッド角の有るブギーでも難無く収まる。販売当初はハードケース込みで8万円だったが、途中からギター本体7万円、ハードケース1万円のバラ売りとなった。
BG800 (Boogie)はギブソン的要素とフェンダー的要素が見られ、それぞれを上手く掛け合わせた仕様となっている。それらを分かりやすく表に纏めてみた。
Gibson要素 | Fender要素 | |
---|---|---|
木材 | ○ | |
ボディ形状 | ○ | |
ヘッド形状 | △ | ○ |
ヘッド角 | ○ | |
ミディアムスケール | ○ | |
ネック塗装 | ○ | |
セットネック | ○ | |
ピックアップ | ○ | |
ブリッジ形状 | ○ | |
トグルスイッチ | ○ | |
ノブ | ○ |