Boogie Bg. の略歴
コピー・モデルが主流だった神田商会傘下のブランド「Greco」は、1970年代中頃からオリジナル・モデルの生産に力を入れ始めた。「MR」や「GO」などの時代に沿った魅力的なギターを発売し、その流れで誕生した「Boogie」は、フュージョン・ブームを見越して開発されたモデルであった。
1979年にグレコはヴィンテージギターに精通する”Boogie-J”こと高野順氏(ヴィンテージギターズ、K&T Modern Vintage Guitars)をアドバイザーに迎え、新たなオリジナル・ギターの制作に着手し始めた。スプリット・タイプやハムバッカー・タイプのピックアップを搭載した幾つかのプロトタイプの制作を経て、1980年に「BG800」が発売された。ブギーの使用者には、ジューシィ・フルーツのイリア、ゴダイゴの浅野孝已、ARBの田中一郎、ルースターズの大江慎也、海外ではスティーヴ・ルカサー、サンタナ、イーグルス、ジェフ・ベックも所有していた。
形状は一見フェンダー系のように見えるが、ギブソン系ギターのコピーを得意とするグレコだけあって、セットネックであったりミディアム・スケールであったりギブソン的要素も多く、結果ギブソンとフェンダーを掛け合わせたような仕様となっている。
Boogieの特徴は、リバースヘッド、14度のヘッド角、ボディの両ホーンを覆う大型のピックガードなど多岐にわたるが、一番の特徴は独自機構のピックアップ・バランサーであろう。センターとリアのピックアップが連動し、シングルサウンドからなめらかにハムバッキングサウンドにミックスさせることが可能で、バー・タイプのポールピースや独特なピックアップ配置も相まって個性の際立つギターとなっている。ただ、ブギー専用に開発されたピックアップ「Baby Gang」のサウンドはトーンを効かせたかのような籠もり気味の特徴的な音で、扱いやすいとは言い難い。
「BG800」の販売が始まった頃には既にニューウェーブやパンクの時代が到来しており、残念ながらセールス面で成功とはならなかった。時代に沿って改良されたバリエーション・モデルの試作も行われたが、それらが日の目を見ることは無かった。そして製造元である富士弦楽器がFender Japanの楽器生産に注力した影響も有り、「BG800 (Boogie)」は1983年に生産終了となった。
オリジナル・モデルの生産終了から数年後の1989年、ボディサイズがオリジナルの95%と少し小ぶりになったリイシュー・モデル「BG-600」が発売された。しかしボルト・オンネックへの変更や、ピックアップ、木材、パーツなど至る箇所でコストダウンが図られ、オリジナル・モデルとは別物な仕上がりであった。サウンドに関しては「BG800」よりもはっきりとした音質で扱いやすくなっている。
「BG-600」は「BG800」より更に短命で、実質1年ほどの生産、販売に終わった。
とは言え、取り扱いやすいサイズ感や、オリジナルよりも価格の抑えられた派生モデルが出たことは、後の息の長いシリーズ展開に繋がっているので、「BG-600」が世に出た意義は大きかった。
2000年代に入るとグレコ・ブランドの楽器販売が縮小されて行き、ブランドの存続も危ぶまれる状態であったが2011年辺りから突如として復活。ギブソンのコピーモデルや「MR」などを販売した後、2013年6月にリミテッド・エディションとしてオリジナル・モデル仕様の「BG-1400 (Bg.)」が復刻発売された。再現度はかなり高いが、現代仕様に合わせた変更箇所も幾点か見られた。ピックアップは「BG-1400 (Bg.)」専用に設計された「Blade Gang」で、伝統のミドル寄りの音を引き継いでいる。
続けて同年9月にはリイシュー・モデル仕様の「BG-800 (Bg.)」を復刻発売。こちらも完コピに近い出来栄え。このモデルを元に、特別仕様となる「BG-1000 (Bg.)」や、多数のショップ・オリジナル・モデルも作られた。
2016年にはこれまでとは一線を画すストラトキャスター・ライクな「BG-CUSTOM」を発売。リバースヘッドでもなく、ピックアップ・バランサーも無く、ピックガードの形状も違う、ただただストラトに寄せた仕様のギターであった。しかし、まさかとも思える派生モデル展開に大変驚かされた。Boogieらしさはあまり見られないが、Boogieの幅を広げてくれたエポックメイキングなギターであったのは間違いない。
2018年には待望のBg.ベース「BGB」が発売された。基本はジャズベースで扱いやすい仕様となっており、5弦モデルもラインナップされた。最上位機種の「BGB-2500」は税抜25万円と、こだわり抜いたあまりブギーマニアでも購入に二の足を踏んでしまう価格設定となってしまった。
2020年にはアメリカのスタッフ主導のもと、ギターの「BGW22」「BGWT22」、ベースの「BGWB」計3機種を発売。今までに無いカラーリングと仕様が目を引くモデルで、ギターは「BG-800 (Bg.)」を元にピックアップがハムバッカーやテレキャスタータイプとなっている。この「BGW」モデルは日本製造ではなく韓国製造である。
現時点(2023年)ではグレコに昔ほどの勢いは無く、驚きの復活からまた縮小傾向にあるが、「Boogie」「Bg.」シリーズに関しては有り難い事に他モデルよりも良い扱いを受けている。その要因は、この楽器の持つ柔軟性と、時代に囚われない普遍的な魅力にあるのではないだろうか。
ブギーの今後の展開とグレコの再々復活に期待したい。
(40周年記念はスルーされたので、45周年記念モデルを切望!)